【認知症のリスク】糖尿病の何が悪いのか【コロナ肺炎の悪化】

多彩な糖尿病合併症 誰でもわかる糖尿病・甲状腺

こんにちは、Dr.Bです。
糖尿病シリーズ第2回では、そもそも糖尿病の何が悪いのかといったお話をしていきたいと思います。

糖尿病自体で症状が出てくることはそうそうありません。
もちろん倦怠感や易疲労感、体重減少に便秘や下痢、口渇多飲多尿などが出ることもありますが多くは重症の糖尿病(HbA1c≧10%程度)の方です。

治療により高血糖が解除されて初めて

『身体が軽くなりました!
振り返ってみると今までのだるさは糖尿病の症状だったんですね!』

と過去の症状を認識される方も多いです。

症状がないから困らない…という方が身近にいたら注意してあげてください。
糖尿病はとにかく合併症が多いのです。

 




なぜ全身に影響が出てくるのか、それはシリーズ第一回で説明したように全身の臓器がエネルギー不足に陥るのに加え、高血糖により血管が硬くなり詰まりやすくなるからです。血管は全身に張りめぐらされているため、詰まった箇所の臓器がだめになります。

多彩な糖尿病合併症
多彩な糖尿病合併症

まず有名なのが古典的な三大合併症です。
神経障害網膜症腎症があります。

神経障害
三大合併症でまず最初に発症するのが神経症。典型的には両下肢の先から徐々に痛みやしびれが始まり、やがて何も感じなくなります。なぜ段階があるかというと、初期段階では障害を受けて死んでいく神経に置き換わろうと新しい神経が生えてきます。この時にしびれや痛みが出てくるのです。進行すると新しい神経は生えません。
『しびれが無くなりました!糖尿病がよくなったんですね!』
とおっしゃられる患者さんもお見掛けしますが、違います。糖尿病が良くなっているのではなく進行しているからこそ感じなくなるのです。
じゃあ痛みを感じないのが何が悪いの?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、本来痛みというのは身体の異常を知らせてくれる手段なのです。ちょっとした傷口でも痛みがなければ存在に気づかずかばうこともできません。そうして傷口は広がり、膿んでいき、最終的には足が壊死して切断を余儀なくされることとなります。

網膜症(視野障害)
今でこそ失明の原因1位の座は緑内障に譲ったものの、いまだランキング上位に君臨しています。網膜にある細い毛細血管が詰まることによって発症します。
網膜症はその進行度によって①単純糖尿病網膜症、②増殖前網膜症、③増殖網膜症と分類されます。怖いのは最も進行した③の状態にならないと自覚症状が起きないということです。
しかしながら不幸中の幸いですが、三大合併症の中で唯一、早期発見により処置をすることで進展を防ぐことができます。レーザー照射で不要な血管を間引くのです。
残念ながら僕たち内科医では網膜を調べることができないので、眼科を受診していただく必要があります。内科にかかってれば一安心、というわけにはいかないのです。

腎症
三大合併症の中で最後に発症することが多いです。逆説的に考えると、糖尿病による腎障害がある方にはすでに神経障害と網膜症が存在していると見積もっています。
腎臓は本来、血液の浄化装置です。老廃物など身体にとって不要なものを尿に混ぜて身体の外へ排出します。
ここで大事なことは、身体にとって不要なものは捨てるべきですが、栄養や血球など身体にとって必要なものは捨ててはいけないということです。糖尿病による腎症ではこの取捨選択する機能が低下し、本来捨ててはいけないタンパク質や栄養素が捨てられていくこととなります。
そのまま進行するとついには尿自体が作られなくなり、「透析(とうせき)」という、医療機関で血液を浄化する処置を2日に1回受けなければ生命維持ができない状態となってしまうのです。

 



三大合併症のほかにも有名なのが、発症が致命的になりうる脳梗塞心筋梗塞です。
こちらは想像しやすいと思いますが、心臓や脳を栄養する血管がつまるために起こる病気です。

最近のトピックとして新型コロナウィルスの世界的流行がありますが、糖尿病は感染症に対して免疫力が弱くなる(白血球が働かなくなる)ため、コロナウィルスの重症化や死亡率に関係しているとも報告されています。

また、糖尿病では傷が治りにくく感染症リスクも高いため、ちょっとした小手術も行えなくなります。

超高齢社会に突入して久しい日本において社会問題になっている認知症。
糖尿病ではこの認知症の発症リスクも増加します。

歯医者さんを悩ませている歯周病も糖尿病のお友達で、お互いにその病勢を強めていくことがわかっています。

…さて、これだけ糖尿病の危険性を煽っておいてなんですが、どうか安心してください。
総合病院や大学病院で長年勤務していた経験から言わせていただくと、実際に深刻な合併症に悩まされている患者様はごく一部です。
昔からお付き合いさせていただいている患者様にはいつもお伝えしているのですが、健康診断でひっかかってから病院を受診し、糖尿病の専門外来に通院を続けていただいている方であれば、深刻な合併症に悩まされることはありません。

重症者になってしまった方々にお話をうかがっていくと、多くは次の2パターンにあてはまることがわかりました。

①そもそも検診を受けておらず、糖尿病が見つかった時にはすでに進行していた。
②薬を飲まなくても症状は変わらないので通院をしなくなった、あるいは通院していても薬を飲まなかったり暴飲暴食を続けていた。

悔やまれるのは②のパターン。
せっかく通院していたのにもったいないです。
お話をしていくうちに、最初の主治医が十分に危険性を説明してくれなかったからだと憤る患者様もいらっしゃいました。
残念ながら日常診療で我々医師が患者様とお話をできる時間は限られており、なかなか十分な説明を受けられないことも多いのが現実だと思います。

当ブログ以外にも糖尿病についてまとめられているWebサイトは多くあります。
ぜひ診療時間外にも糖尿病についての知識に触れ、ご自身の治療に活用していってください。
無責任に聞こえるかもしれませんが、生活習慣病は医師が治せる病気ではありません。
僕たちはあくまで助言者であり、治療するのは患者様ご自身です

なにごともそうですが、自身の運命に責任を負うのはほかならぬ自分自身以外にありません。

糖尿病は正しい知識をもってすれば危険な病気ではありません。
新型コロナ騒動でもよく言われていたことですが、皆さん正しく恐れましょう。

 




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